サイバーユニオン

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労働安全活動

労働安全活動

 何トン何十トンというような重機をあつかう職場は常に危険と隣り合わせです。
 東京一般労働組合は75の企業で働く組合員が一人ひとり加入してできた個人加盟の労働組合で、その中の製造業各社で働く組合員が横につながって製造業部会をつくっています。製造業部会の活動は安全交流と職場見学の年2回とりくまれています。

 昨年は組合員のいる職場で労災隠しと労災事故という悲惨な体験をしました。被災したのは非組合員ですけど、同じ職場で働いていた仲間が防ごうとすれば防 げるような事故で被災し、その労働者の一生に過酷な重荷を負わされた。被災した本人だけでなく職場の仲間も堪らなくつらい思いをしました。このようなこと を繰り返さないために、製造業部会では経験交流をして無災害をめざしています。
 なお、事務職やサービス業の職場など多くの働く仲間にも製造業の安全に対するとりくみを理解してもらえるよう対話形式で作成しました。

労災隠し

■ゴンドラ落下事故
2014年8月、A社の製造現場でゴンドラに乗り作業中、クレーンフックからゴンドラフックが外れゴンドラが落下し、作業員2人が宙づりになるという事故 が起きた。このとき作業員は安全帯を装着しており、宙づりになって大きな災害には至らなかった。それでも2人とも安全帯で腰をググッと強く締めつけられ、 外そうにも外れないため安全帯を鎌で切って取った。

上司は「ケガしなかったからいいや」、「お前黙ってろよ」、「どっちみち1日経てば治るんだから」と、そうすると部下も「それでいいや」となってしまった。
このとき現場にいた上司は、作業員2人に口止めをして、上司にも報告をせず、また安全日誌にも書かず、外傷がないからいいやって事故を伏せてしまった。

ところが何日経っても腰の痛みが治らない作業員は、とうとうこのことを洩らしてしまった。それでバレてしまったどころか、今度は「ああいう上司の下では働けない」となった。

この事故は発覚するまでにかなりの時間が経っていた。社内で問題になったのは10月、本社から現場検証・事情聴取があって、”これは絶対に許されるものではない”という判断から数名が処分をうけた。


<補足>
この労災事故は、東京一般の組合員が情報をつかまなければ、何も知らないで何カ月か経って、「ああいうことあったんだよ」といっても、ウヤムヤにされてしまったかもしれません。組合が日常的に行っている地道な活動によって明らかになりました。
労災隠しって何だろう?

労働災害の事故、つまり労災事故は一瞬の間に起こります。
A社は一歩間違ったら死亡につながるような災害を発生してしまったんですね。それを安全日誌にもとらなかったし、上司にも報告しないで現場の責任者が独断で止めていた。ちょっとした魔が差したのか、労働災害隠し(労災隠し)をやってしまったんですね。


報告を怠ったことも労災隠しっていうのかな???

労災隠しとは、法の規定に従って報告すべき労働災害を報告しないこと、あるいは内容を偽って報告することをいいます。

つまり、労災隠しは法違反なのですね。
ところで労災隠しをするとどんなリスクが考えられるんですか?

いわゆる労災隠しが行われると、職場では労働災害の把握・対応のシステムが機能しなくなるだろうし、A社のように職場の人間関係が壊れることも考えられるよね。何より被災した労働者は本来受けられるはずの労災保険の適用をうけられなくなることが大きな損失だね。

えっ!後から申請してもダメなんですか?

腰 が痛いのが職場での事故によるものだと後からでも証明できれば別だけど、かなり難しいね。それから黙って自分の健康保険証を使って病院にかかったとして も、それも労災隠しになってしまう。だから、職場で事故があったら本当は現場にいる上司が、そういう目に遭った労働者にいち早く「病院に行って検査して元 気な姿で戻って来い」というのが普通なんだけど、そういう立場の人たちがそのまた上の人から評価されるという関係で「俺の班から出すと、俺の評価が悪くな る」と報告をしない。これが労災隠しの主なケースなんだよ。でも行政は労災による人事評価を禁止しているし、労基署はこれを厳しく取り締まっている。
 事故が起きたらすぐに病院に行かせる、労働者も行くということが大事なんだ。それで何もなければいうことなしだよね。

そうですよね、作業をしていた労働者が自ら病院に行けばいいんですよね。あんなに腰を痛めたのになぜ作業員の方々は病院に行かなかったんでしょうね。

それはね、ケガをする人っていうのは自分にも非があるという気持ちになってしまうんだよ。だから、どうしても上から報告しないよっていわれれば部下は我慢して従ってしまう。そういう弱い立場にあるんですよ。
 会社によっては、お前ケガばっかりしてるんだからと査定されたりするところもある。また労働者だって病院に行ったりなんかすると、「みんなに迷惑掛けて んじゃないか」という気持ちにもなる。ただし、さっきもいったけど査定は労基署の取り締まり対象だよ。

それを防ぐにはどうしたらいいの?

今回のことが東京一般の日常活動=7つの職場活動の実践から発覚したように、労働組合がチェック機能を働かせて、常に労働問題に手を出して安全問題に参加していることが大事。
 例えば、組合があっても経営者側に沿っている組合だと、経営者といっしょになってケガしてないんだからいいかいいかとなってしまう。それでは現場の労働者はモノがいえないだろう。
 だからこそ組合が現場でモノをいえるようにしておくことが大切なんだよ。こういう問題が起きたときには、安全委員会で組合側がガチンといえるようにして おく。団体交渉を申し入れて、きちんと会社側と話し合う。それくらいしておかないと労働者の命がかかってるんだからダメなんですよ。

ふう~ん、組合の活動って地味だけど大切だね。それに職場で事故が起きてあわててやろうとしても、日頃から労使関係を築いてないんじゃ無理よね。

つづいて労災隠しの統計データなどを見てみよう。

労災隠しとその動機および送検状況

■労災隠し
 いわゆる労災隠し(法の規定に従って報告すべき労働災害を報告しないこと、あるいは内容を偽って報告すること)が行われると、労働災害の把握・対応のシ ステムが機能しないのみならず、結果として労災保険の給付申請がなされないことも多いことから、被災労働者の十分な保護に欠けることともなる。

労災隠しの動機として挙げられるもの
  1. 工事の受注が受けられなくなることを避けるために行うもの(元請が発注者の指名停止を避けるために行う場合や下請けが元請に迷惑をかけたくないとして行う場合など)
  2. 労災保険のメリット制により納付すべき労災保険料が増額することを避けるために行うもの
  3. 法違反の指摘(ひいては刑事責任の追及)を受けたくないために、労災保険の給付請求はしても、災害発生状況の報告に虚偽を記載するもの
  4. 作業の責任者、監督者等が会社における自己の評価を下げたくないために行うもの
■司法処分
 労働基準監督官が司法処分として検察庁に送検した件数から労災隠しと見られるものの送検処分状況を厚生労働省が毎年だしている『労働基準監督年報』から拾ってみました。

 労働安全衛生法違反被疑事件の中で同法第100条違反(労災隠しは、安衛則第97条の死傷病報告義務違反として安衛法第100条違反を構成する。同条違反の大部分が労災隠しの関連と見られる)の件数が相当数にのぼっている。

【安衛法違反】
年数   送検処分総数  うち、安衛法第100条違反
2013年   560件        89件(16%)
2012年   614件       131件(21%)
2011年   542件       111件(20%)
2004年   687件       125件(18%)

以上
〔2015年7月24日掲載〕